役員秘書の募集をして、五人までしぼり込んだことがあった。きわめて有能な女性ばかりで、ひとりを選ぶとなると難行した。そのとき、当の役員がこういいだした。「笑顔で選ぶんならあの娘だな。感じがよかった。いまみたいに決めきれないでムシャクシャするときには、あんな笑顔が貴重だよ。気持ちが落ち着くだろう、きっと」。このひとことで衆議は一決した。けっきよく、優秀な五人のなかから最後に抜け出したのは“笑顔の娘”ということだった。「女はあいきょう」を絵に描いたような結末だが、これは、実は女性に限ったことではない。男の場合でも。笑顔は人に好かれ、印象もよく、得もする。面接では、質問されるとニコッと微笑み、それから話し出すという人を何人か見てきたが、緊張して青ざめたりカチカチになったりする人が多いなかで精神的に安定してみえ、余裕さえ感じられて、面接官の採点はだいたい上々であることが多かった。面接では元来、入室して着席し、顔を合わせて対座するまでの第一印象が大きくものをいう。それが、面接官の先入観となってしまうことがあるので、固い表情で暗い感じはだめ、笑顔を訴えられればそれにこしたことはないわけだ。
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