帝王ブログ

美容外科の手術はクレジットで

2011.03.05

女性週刊誌には「美容整形クレジット」の広告もあった。「二重まぶた専門クレジット− お出かけ前の化粧時間の短縮に…すぐに、当社が選んだ経験豊かな二重まぶた手術の専門医をご紹介。手術もわずか10分位です。しかも翌日から勤務、通学に差しつかえなく通院も不要です。お気軽に電話で係までご相談ください。ご希望の日に専門医と相談(無料)、手術の予約斡旋もいたします。費用は当社が立替えいたします。しかも支払いは、毎月便利な銀行引き落とし、振込です」「お支払い例」という欄には、手術費用15万円の場合、例えば頭金3万円、月々1万1050円を11回、と書いてあった。また、こんな広告もあった。「より美しく。より健やかに。医療費だって、分割払い。美容外科、医療エステを含む全科目の医療費が、分割払いできるようになりました」「二重まぶた」「脂肪吸引」「隆鼻」「豊胸」「脱毛」「シワ取り」「ワキガ」「点滴ダイエット」「エステティック」という文字が躍っている。それにしても「点滴ダイエット」ってなに?ベッドに縛り付け、なにも食べずに点滴だけで何日間か耐えて痩せる、というダイエットのことだろうか。病的な肥満でどうしても必要にかられて、ということはあるかもしれないが、たいして太っていない子が「苦しい思いでダイエットをするよりも、いっそ入院して『点滴ダイエット』1週間の方がいいわ」と、みるみる痩せていく。私は広告にあった電話番号を押してみた。「あの、雑誌で見かけたんですけれど…『点滴ダイエット』について詳しく知りたいのですが」「ああ、あれはね、かなり高額になってしまうんで、最近はあまり扱ってません。というのも、長期の入院が必要なんでね。日中、歩き回らずベッドに寝ていただいて、各種の点滴を施します。同時に食事療法もいたします」。まさか、ジョークかと思っていたのに。ホントだった。私は別の広告のクレジット会社にも電話をしてみた。03で始まる東京都内の番号だった。受話器のむこうで、若い女の甲高い声が響いた。「はい、×××です。どこの手術をご希望ですか?」思いつくまま「二重」と言うと、「どちらにお住まいですか?」私は自分の住んでいる地名を告げた。「東京ですか、はあ」「えっ、そちらは東京じゃないんですか?」電話の相手はちょっと間を置いて、「福岡なんですよ」、そしてあわてて続ける。「ちょっと東京の事務所がお休みなんで、転送電話でこちらに回っているんですよ」。「転送電話」というキーワード。先頃訪ねた「固有名詞のない美容外科」を思い出す。ここも似たようなシステムで動いているのだろうか。電話の相手は各地の病院と提携している、と言った。そしてある診療所名を告げ、「信頼のおけるところです。こちらで予約をおとりしますよ」。この様子だと、広告を見て何げなくかけた電話一本で、あっという間に予約をいれるようなことが日常茶飯事に行われているらしい。大切な顔のことなのに、そんなに急いで大丈夫なのだろうか。「東京はそこ1軒だけなんですか?いつごろできた病院でしょう。院長の名前は?予約の前に話をくわしく聞きたいんですが」と私は質問した。しかし、電話の相手は医師の名前を言わない。「名前を言ってもおわかりにならないと思うんですよ。最近開業したんでね。けれど、信頼のおけるところですよ。お上手な先生ですからね。大丈夫です」。それでも私がしつこく質問を繰り返すと、「いったい、なにをお知りになりたいんですか?」と言う。「手術を受ける先生の名前や雰囲気や評判を知りたいと思うのは、当たり前でしょう」「先生ですか?ですから、とても感じいいですよ、ええ」と相手は言い、いきなり「カウンセリングの予約をとりますから、あなたのご都合のよい日を言ってください」と来た。それでもねばってみる。「ちょっと待っていてください」と、2度ほど話を遮られ待たされる。長い問い合わせが面倒になったのか、相手はやっと医者の名前と電話番号を教えてくれた。そして、「二重の手術以外に鼻や脂肪吸引やあご削り、シワ取り手術なども手がけている。都合のよい日が決まったら必ず当方に電話をして予約をとってくれ」と、相手は繰り返した。電話線という一本のネットワークで、結びあわされる患者と医者。これはまさにテレフォン・ショッピングなのだ。医療法には広告制限が定められている。医療法69条は、最低限の情報−診療科目、場所、医師名、診療時間など定められた項目しか広告してはならないと明記している。この手の広告は医療法違反にはならないのかどうか、東京都衛生局医務課指導係(当時)に問い合わせてみた。「たしかに、医療を金儲けの手段にすることは違法です。けれど信販会社が医者を紹介するようなシステムの場合、現行の医療法では取り締まれません。たとえばクレジットの広告に病院名や医師名が入っている場合は、医療法69条違反になりますけれど…」。医療費の支払いをクレジットで行うケースは、歯科などにもある。しかし、美容外科の場合は、症状や痛みなどがなく、手術が本当に必要なのかどうかの客観的な基準が見えにくい。そのために、商業的な色合いが濃くなりやすい。眠っていた欲望を揺り起こし、不必要な手術をさせてしまう可能性がある。極端なことを言えば、道を歩く人の全てが「お客さん」になる可能性を秘めている。たった10分のカウンセリングでベルトコンベアに乗せられたようにして手術を受け、思いもかけぬ顔になってしまっても、もとに戻すことはできない。大量生産品には一定の割合で不良品が出るものだ。

[参考情報]
http://www.broest.com/tips02.html


http://www.saishou.net/column02.html


http://www.genkoku.com/